おやすみなさい

旧nikki desu

朝に


妹が朝からすり寄ってきたので不審に思っていると、「ワードで書いたファイルを先生に送るにはどうしたらいいか教えて」と言ってきた。

まず、今までメールにファイルも添付できずに生きてきたの? と思った。次になんでこんなに簡単なことを妹はわたしに聞くの? と思った。

わたしが「調べたの?」と訊くと妹は笑顔で「調べてない」と言った。「なんで自分で調べる前に人に聞いたの?」と訊くと、妹はわたしを突き飛ばし「もういい! この人嫌い!」とヒステリックに怒鳴りだし、わたしは頭おかしいなこいつと思った。そのまま自室のある二階へ逃げた。妹は相変わらずヒステリックに母に愚痴と暴言を放っている。

以前は何を言っているのか気になって聞き耳を立てたりそれに反論したりしていたけれど、もう聞かないことにした。めんどうになったら関わらない。ふつうのことだけれどやっとそう決めた。自分のほうが正しいという自信があるからどうでもいい。不健康で不愉快なだけのことに時間を割くのをやめる。

 

自分で考えない。自分で調べない。それがふしぎで堪らない。好奇心や向上心がないのかもしれない。

妹はなんでもわたしに聞いてくる。パソコンの使い方もそうだし分からない漢字なんかも聞いてくる。

まずわたしが起きてくるまで待っていたわけ? その時間で調べたほうが早いと思うよ。

とりわけ文章作成のあれこれはわたしに頼めばいいと思っている節がある。義務教育のころの読書感想文の添削もやったし受験の小論文の添削もやったし今はレポートの添削もやっている。

添削くらいならまだいいほうで、ほとんどすべてを書き換えたことも少なくない。妹は常軌を逸して文章が下手だった。いや、文章が下手なんじゃなくて、考えることができない人だった。

昔はわたしもやることが少なかったから別にいいやと思っていし、文章を書くのは嫌いではないのでよかったけれど、自分がやりたいこと、やらなければならないことがあるのにその時間を割いて妹のことをするのがめんどうになってきた。だからやりかたや考え方を教えることにした。そうすると、まあ時間がかかること。赤ん坊かよ。せめて生まれ直して来いよ。

今回のメールのことも、こうやってやるんだよー☆ ってやってあげれば早いんだけれど、そうすると妹は覚えない。何度やってもちっとも覚えない。これはもう経験則で分かっている。CDの音楽をパソコンに読み込ませるだけで3年くらい掛かっている。

取り越し苦労かもしれないけれど、この子今後一人でどうやって生きていくんだろうと思う。

このまま順当にいくと確実に就活の履歴書やエントリーシートの添削もする。面接の受け答えの添削もうするだろう。そのころにはわたしは家にいないわけだけれど。

なんだか華奢でちょっとカワイイ顔をしていてすこし歪なユーモアもあるので助かっているものの、これで不細工だったらほんとうにひどい、と思う。親に感謝しろよ。もう顔歪んできてるけどな。

 


妹には好きなものがない。やりたいこともない。本もまんがも音楽も映画も別に好きじゃない。スポーツは嫌い。勉強も嫌い。福祉系の学科に入ったのは「いい人に見えると思って」。

基本的にミーハーで、微弱ながらも世間の流行を捉えていてそれに乗ったりもする。嵐はちょっと好きで、ファンクラブに入ったりもしていた。サッカーなら内田選手。石原さとみは前髪を切ってからカワイくて好き。でもそれももう飽きた。

妹自身自分のミーハーさや主体性のなさは理解していて、自虐風にそれを語ったりもする。そんな主体性のない様、流され流され生きている様もおもしろいと思うし、それがいわゆる世間の言う「ふつうの人」(とは言っても実際にはそんな人は少ないのだと思う)なのかとも思うし、妹のキャラクターとしては悪くはないとも思う一方、好きなものがない世界で生きてゆくのはつらいことだと思う。

 

二日くらいまえに、昔クドカンが猛烈に好きだったことを思い出した。ここ何年もの間ろくに作品も見ていなかったし朝ドラも見てないし大人計画からも離れていて出演作品も生はもちろんDVDですらなかなか見ていなかったと思う。なのにとつぜん思い出した。クドカンが好き!

作品も好きだけれど正直なところ一番は風貌が好き。というか顔が好き。なんだか分からないけれどあの顔が妙に好き。だからもともと作家としてより役者としての宮藤さんが好きだった。エロスの果てとか熊沢パンキース03とか、シアテレを録画したものを何度も何度も観た。ということをとつぜん思い出した。

それからなんだか楽しくてしかたがない。好きなものが増えると楽しい。ただ生きてるだけなのに楽しい。これが数日すると落ち着いて、また忘れていくのかと思うと悲しいけれど。でもそういうふうにして暮らしていくんだと思うの。

好きなバンドの新譜を買いに電車を乗り継いで遠くのCD屋さんに駆け込んでみたり、半年先の舞台を楽しみにして過ごしたり、そういうふうに暮らしてゆく。

とくべつに好きなものがないってどんな感じなのかな。なにか妹にもとくべつ好きなものが見つかればいいな~~~なんて思う。そうでなくとも生きてゆけるけど、好きなものがあるだけでずいぶんと違う生活があると思う。

 

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