ベケット神
夢を見た。そこは、ベケットが神として君臨する世界だった。
ベケットは過去に終末の日を予言したそうだ。その日が今日だった。
雨が降っている。暗い。私はノートパソコンを庇いながら傘も差さずにバスを待っていた。海へ行くためだった。
バスがやってきた。606の市バス。市バスには既に人がたくさん乗っていた。皆海へ行くのだろうか。
ノートパソコンは濡れていた。もうきっと駄目だろうと思った。邪魔だったので、バスに乗る際に捨てた。もはやわたしにパソコンはいらなかった。
バスには知り合いがたくさん乗っていた。父に似ていると思っていた教授も乗っていた。教授に会えて、わたしは安心した。この人に会えればもう大丈夫だと思った。教授はベケットに詳しかったから。ぎゅうぎゅう詰めのバスに揺られながら進んだ。
バスは、小さな合宿所のようなところへ着いた。古ぼけた施設だった。木造で、廊下を歩くと足元でみしみしと鳴る。
皆、荷物を置いて外へ走り出た。わたしは何も持っていなかったので、教授と手を繋いだ。
細い道を抜けると急に視界が開け、そこには海があった。雨は止んでいた。
皆、楽しそうに海の中へ走ってゆく。水面がきらきらと光っている。
後を追うように、わたしたちも、手を繋いだまま海の中に走っていった。足元でぱしゃぱしゃ水が跳ねる。ワンピースの裾が濡れる。
今日が終わりの日だなんて嘘みたい。そう思った。
気付くとわたしはよれよれのパーカーを着た20代後半の男になっていた。小学校にいた。三階だった。
わたしは(ぼくは)小学生を襲おうとしていた。めがねをかけたロングヘアの女子小学生をとっつかまえて、さあ犯してやる、と思ったのに、なぜか体はマッサージを要求していた。床にごろんとうつ伏せに寝転んで、「さあ、踏んで」、小学生にそう要求した。小学生は困った顔をしていた。
その困った顔をみて、わたし(ぼく)は込み上げてくるオーガズムを感じた。
おわり。