おやすみなさい

旧nikki desu

彼はやさしい


わたしの彼はやさしい。

このあいだ、わたしは怒った。電話で話しているときに、おれ本読むのはやいんだよね~みたいなことを言っていて、どうしてだかカチンときたわたしは、早く読むのがえらいとでも思ってるの? 本は早く読むものじゃなくて一字一句の意味を考え反芻しながらすみずみまで読み込むものなの! みたいなことをキレぎみに言ってしまった。今思うとなんでいきなりキレたのかよくわからない。でもそのときわたしはなんとなくキレた。ナイーブさん。

わたしが彼の立場だったらそこで、……は? なに怒ってんの? やだーこわいーいきなりキレた挙句意見の押し付けとかホントやめてーってなるとおもうの。でもそこで彼氏は「そうか。ごめんね。(わたしのあだな)がそう言うなら次からはそうする」と言った。

うわーなにこのひとー! とおもった。すごいー! とおもった。わたしだったらそこで折れられないだろう。自分の意見を主張して自分の意見が正当だという意見を主張してとにかく押して押して「はいはい分かったからもういいよ」と呆れられるところまで押し進めるだろう。そうなってなお、で、どっちが正しいと思ってる? とか言うかもしれない。

正しいって! 正しいとか正しくないとかいう場じゃないんだよなあ。そう分かっているのに正しさとかいう尺が出てきてしまう。しかも自分正しいって思ってる。その上相手にまで自分の正しさを強要しようとしている。

そこで、はいはいそうだねって言ってあげたら収まるものだと分かっていても、本のこと、文章のことでわたしはきっと妥協できないしするべきでないと考えているはずだ。

だから、自分のできないことをできる彼をやさしいと思う。

でも、同時にそれは彼のこだわりがそこにないということでもある。彼氏とっては本とか文章とかどうでもよいことなのだろうなと思う。だから妥協できるのだ。本よりわたしが大切だから。

本や文章をべつだん大切におもわないという価値観の不一致はさみしいけれどわたしを大切におもってくれるという事実はうれしい。わたしを大切におもってくれるという事実はうれしいけれど本や文章をべつだん大切におもわないという価値観の不一致はさみしい。



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つぶれたわたしを文句ひとつ言わず介抱してくれたり二日酔いでカラフルなゲロを吐いているわたしの背中を心配そうになでなでしてくれるあたりはほんきでやさしいとおもう、わたしなら彼女が意味不明な色のゲロ吐いてたら正直ひいてしまう。