おやすみなさい

旧nikki desu

墓穴掘り

 

■■ ■■先生

 

 

返信が遅れてしまって申し訳ございません。

ご連絡、ありがとうございます。

率直なご意見、また、とてもありがたいお言葉をいただけ、非常にうれしく思っています。

少々長くなってしまいますので、お時間のあるときにでもお付き合いください。

 

 

「■■■■■■■■■■■」という言葉に関しては、おっしゃられる通りだと感じます。しかしきらきら、という言葉の軽薄でチープな響きや、きらきら、という表現の「甘さ」、また、甘い、という言葉の持つ「甘美な」そして「厳格でない」という意味の二重性を考えると、現段階ではそれ以上にしっくりとくる表現が思いつきません。このあたりがまだまだ勉強不足であると感じます。もっと相応しく、また独創的な表現を追求してゆきたいと考えています。

 

また、つなぎの文章に関しましては、私自身少々捻りが足りないというか型にはまっているかなとも感じていました。

しかし、それはそれでいいのかもしれないとも思っていたのです。二、四、六のものは、特にそうです。

「■■■」では、「あのころ」、そして、あのころ、と口にするときの甘やかな郷愁のようなものを描きたいと思っていました。

そのため「■■■」でキーになっているのは「記憶」と「終わり」です。メインになっている三本の短編は、端的に言うと「記憶」と「その記憶の余韻」=「思い出」を描いたものでした。

一方二、四では、「記憶の終わり」を描きました。そこにはもう記憶の余韻すらなく、あのころへの郷愁もなければ、あのころと口に出すこともありません。そこには「思い出」、物語はもうありません。

ただ、六に関してはもっと作り込むことができたと感じています。

 

口頭試問の席で、先生方が、〇、一、九の語りはマクベスの三人の魔女のようだとおっしゃられました。たしかにその通りだとわたしにも感じられました。しかしわたしはそれをあえて、「亡霊」と呼びたく思います。

 

タイトルの「■■■」という言葉は、■■■■氏の作品「■■■■■■■■■」に登場する「■■■」という概念を引用しています。

「■■■■■■■■■■■」もまた、街と街に集う若者、そしてその時代を描いた作品でした。

■■■、一言でいうとそれは、「どこにもない理想郷」です。「欲望それそのもの」であるとも言えるかもしれません。

人生の中で誰しもが一度出会えて、そして必ず終わってゆくなぜだか無性に輝かしい時間、ひとはそれを「青春」と呼ぶのだと思いますが、その時間と、なにかを求めてひととき訪れ、そして必ず家に帰ってゆく「街」という場を掛け合わせました。

「■■■」では、スポコン漫画に出てくるような分かりやすい形ではないですが、たしかに青春を描いたのだと感じています。そしてその青春の時間を過ごす女性を、私は「女の子」と呼んでいます。だから「■■■」は女の子たちの物語であることは間違いありません。

女の子たちは、なぜでしょうか、皆自主的に女の子であることを「卒業」してゆくのです。「もういいとしだから」「いつまでもこんなことしてられない」。誰に言われたわけでもないのにそうして自らして女の子であることをやめてしまいます。それはさながら「女の子」の「自殺」です。

 

ものを書くという行為は、思い出や記憶をひとつひとつ埋葬してゆくことだと常々感じます。

埋葬したつもりになって、けれど成仏しきれないもの、それが亡霊です。

彼女たちもまた、女の子であった自分を殺しかりそめの大人の道をゆきます。

人(ここでは女の子、ですね)が街を欲するのは、街にはやはりそういった女の子をやめてしまった女の子たちの女の子の部分の亡霊がうようよしていて、それに感電するからなのではないかと私は感じるのです。

 

八において、お分かりかと思いますが、この語り手の女性は三の■■です。■■もまた、時を経て、青春時代とその郷愁を忘れかけています。

さきほど、二、四には思い出も物語もないと書きましたが、それでいいのです。それこそが、生きてゆくということ、暮らしてゆくということなのだとわたしは感じています。

わたしの制作テーマは「生活を続ける」です。「生活が続く」ではなく、続ける、のです。このお先真っ暗な世の中にあって、自ら暮らしを続けること、暫定的にその営みを選択することに価値があると感じています。

楽しかったことどころか悲しかったことすらも忘れてゆきなにもなかったことになってしまうのはどこかさみしいことに感じられますが、そうしてでもこれからを生きてゆくことが尊いのだと信じています。

 

思っていたよりずいぶん長くなってしまいました。

おっしゃられる通り、次は中編を書くつもりで準備を進めています。

また機会があれば、ぜひ読んでくださいね!

まだまだ寒い日が続きますので、風邪など召されぬようお気を付けくださいね。

それではまた。


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