ねむたさと赤の爪
なぜこんなにもねむいのか、や、眠り続けることができるのか
そういうタイプのひといるんだよね
主治医がそういう
それにしても寝すぎじゃあないか
24時間のうち3時間ほどしか目覚めていない
それをまいにち
よくもまあねむれるもんで
布を纏うのがあまりすきじゃないわたしは、いまは、下着だけつけて眠る
かわいい下着、年齢にそぐわないパステルカラーの下着、あるいは年齢相応の、いやしかしわたしには大人びて思える、淑女のようなしとやかなレースのみの下着、
はだざわりのよい抱き枕を抱いてねむる
はだざわりのよいものが好きだ、ちがう、はだざわりのよいものしか好きじゃない
もう30時間ほどまえから風呂場からぴと、ぴと、と水滴の落ちる音がしている
でもすぐにわすれてしまう、ねむってしまう
1日のほとんどを寝て居る
もうこのへやには時間もないし曜日もない、昨日も明日もない
このここちよさ
ひとりきりで死んでいるようだ、ありがたい
こういうふうにひとりでいられるのは
男の子の誘いも女の子の誘いもぜんぶ蹴っ飛ばして眠り飛ばしてしまう
妹のLINEだけりちぎにかえす、不必要なまでに
わたしの夢に父はほとんど出てこない
わたしの作品にも父はほとんど出てこない
ふしぎだな
だれに見せるでもないけれど紅く塗られた足の爪がわたしと社会をかろうじて繋いでいるように思える
ある